学校であった怖い話
>七話目(荒井昭二)
>C8

「……ほかにですか? そうですねえ……」
僕が考え込んでいると、日野さんは身を乗りだした。
「でさあ、お前はどの話が一番怖かったんだ?
まさか、風間のが一番怖かったんじゃないだろ?」

「まさか。そんなことないですよ。確かに、最初聞いているうちは驚きましたけど、話がムチャクチャですもん。そうですねえ、僕が一番怖かったのは……やっぱり荒井さんのですかねえ」
人によってどの話が怖いかというと意見は分かれると思う。

でも、僕は荒井さんのあの話し方や雰囲気、そして何よりも最後にとても嫌な気分にさせられたあの話の落ちが一番印象に残ったのだ。
「荒井の話? どんな話だ?」
日野さんは、不思議そうな顔で首を傾げた。

日野さんも、荒井さんがどんな話をするのか聞いていないらしい。
もっとも、どの話をするのかも、彼らにおまかせだったのだろうけれど……。
僕は、荒井さんの話をかいつまんで話して聞かせた。

「ええ。人形の話なんですけれどね。
この学校では、毎年一人ずつ人形に生けにえを差し出していくっていうんですよ。それで、今年の生けにえを一人差し出せば、人形に生けにえを差し出す儀式も終わるっていうものなんですけど……」

「その荒井って奴は、人形の生けにえになったわけだな」
日野さんは、ようやく納得したように一人でうなずいた。
何をいってるんだろう、日野さん。

「いえ、違いますよ。荒井さんが話してくれたんであって、荒井さんは生けにえになんかなりませんよ。もっとも、最後に、僕たちの誰かが生けにえになるっていってましたからもしかすると……」

「ちょっと待てよ。
荒井って誰だよ」
日野さんが、不思議そうな顔で口を挟んだ。
「荒井って誰だ?」
日野さんの一言は、僕にはとても理解できないものだった。

「……誰って。日野さんが呼んだんじゃあ……」
「俺は荒井なんて呼んでないぜ。呼ぶも何も、そんな奴は俺の知り合いにいないしな。お前、夢でも見たんじゃないか?」
「そんな……」

「そうだよ。お前、夢と現実が、ごっちゃになってんのさ。
俺が呼んだのは、風間と新堂、それに岩下、清瀬、細田、福沢の六人だ」
「清瀬?」
『清瀬』という名前に聞き覚えはない。

そんな人は間違いなくいなかった。
「清瀬だよ、清瀬。三年F組の清瀬尚道だよ。
行かなかったのか?」
日野さんも、何だか気味の悪そうな顔で僕に聞いてきた。
「……ええ」
僕は、うなづくしかなかった。
そんな人を僕は知らないのだから。

「本当に、荒井って奴がいたんだな?」
「ええ」
僕は、きっぱりとうなずいた。
あれは夢ではない。
他の人に聞いてもいいくらいだ。

そうだ。
他の人に確かめてみればいいんだ。
「僕、昨日話を聞いた人たちに確かめてみます!」
僕はそういうと、日野さんの言葉も聞かずに部室を飛び出した。
まだ、みんな残っているだろうか?

誰のところに行ってみようか?
1.福沢玲子
2.岩下明美
3.新堂誠
4.風間望
5.細田友晴
6.清瀬尚道


◆一話目で岩下が消えている場合
2.岩下明美


◆二話目で風間が消えている場合
4.風間望


※全員の話を聞き終わると話が進む
(→全員聞き終わった場合)