イーハトーヴォ物語 |
第一章 貝の火 第二章 カイロ団長 第三章 虔十公園林 第四章 土神と狐 第五章 グスコーブドリの伝記 第六章 オツベルと象 第七章 セロ弾きのゴーシュ 第八章 雪渡り 最終章 銀河鉄道の夜 |
登場人物 7冊の手帳 アイテム 情報 |
【第一章 貝の火】 |
●イーハトーヴォ駅 あてのないたびをつづけていた 私がおりたのは、 イーハトーヴォという駅だった。 まるで童話のなかから ぬけだしたようななまえ・・・ どういうところなのだろう? 私はしばらくこの街を あるいてみることにした。 「イーハトーヴォにようこそ。 「とうぶんのあいだ、 きしゃはきませんよ。 「この街ははじめて? もしはじめてなら、らすちじん協会の 宮沢賢治さんに会っていくべきだ。 「賢治さん? 賢治さんはイーハトーヴォのほこりさ。 詩人であり、童話さっかであり、 学校の先生をやっていたこともある。 ぜひいちど、会ってみるといいよ。 「賢治さんにはもう会ったかい? 私はとりあえず、らすちじん協会の 宮沢賢治さんに会ってみることにした。 |
●イーハトーヴォ市街地 「賢治さんに会うなら、 街の北西にある、らすちじん協会に いくといいよ。 「この街にすんでいる人たちは、 みんなやさしい人ばかりさ。 「らすちじん協会は、 ここから西にむかい、はしをわたって 少し北にむかうとあります。 「しってる? シグナルとシグナレスは、 お話ができるんだよ。 「ああ、イーハトーヴォの春は、 なんてきもちがいいんだろう・・・ 「ぼくのシュミは、あるくこと。 おきにいりのコースは、 えいが館とじぶんの家の間かな。 キミも、けんこうのために あるくといいよ。 「うふふ・・・ シグナルとシグナレスのことは、 みんなにはナイショよ。 「ぼくはみなしご。でも、げんきさ。 「ワン、ワン、ワン。 |
●イーハトーヴォ駅前 シグナル 「ぼくはシグナル。 シグナレスさんがすきなんだ。 シグナレス 「わたしはシグナレス。 シグナルさんがすきなんです。 |
●イーハトーヴォ市街地 「らすちじん協会のめざすものは、 農民のためのルネッサンスだ。 「貝の火の森のどうくつには、 ほらぐま先生というものしりが すんでいる。 かれはとてもすずらんのはなが すきなんだ。 かれのことでなにか わからないことがあったら、 またぼくのところへきたまえ。 「ラーララ、ラララー すずらんはー、かわぎしにー さいてるのー・・・ かびんにいけるとー すずのねがー、きこえるー・・・ 「ボクのかあさんは、 いつもうたってるんだ。 「ああ、なんてすばらしい 日なんでしょう! 「市街地のまんなかにある ケンジントンホテルは ちいさいけどいいホテルだよ。 「ごぞんじですか? イーハトーヴォにくる、 きしゃのほんすうは少ないんですよ。 「クーボー博士は、 いつも農学校のけんきゅうしつで、 なにやらジッケンをしています。 「うちのむすこは、 イーハトーヴォ農学校で べんきょうしてるんです。 「街のそとにでても、 どこにもいけないコトがあります。 そんなときは街の人と会話して、 道をききだすとよいでしょう。 「カイロ団長は あくどいしょうばいを するやつなんですって。 「カイロ団長は、 アリの女王のつくった酒を、 やすいねだんで かいこんでいるらしい。 「かつどうしゃしん館は、 しばらくおやすみだってさ。 「いいコトおしえてあげる。 アリの女王の家には、 たくさんウイスキーがあるのよ。 「ワン、ワン、ワン。 |
●ケンジントンホテル 「いらっしゃいませ。 ケンジントンホテルへようこそ。 おとまりですか? →はい 「それでは、 おへやへごあんないいたします。 →いいえ 「またのおこしをおまちしてます。 「いらっしゃいませ。 ホテルしはいにん 「とうホテルは、イーハトーヴォで いちばんのホテルなのでございます。 エッヘン。 「私はたびのしょうにんです。 あなたもたびのかたですね。 ここはひとつよろしく。 「この街は人もおおくないし、 あまりにぎやかじゃないんですね。 わたしはしずかなこの街がすきです。 |
●イーハトーヴォ市役所 レオーノキュースト 「私のなまえはレオーノキュースト。 ここイーハトーヴォしやくしょで はたらいています。 わからないことがありましたら、 いつでもいらしてください。 「うけつけはとなりです。 |
●猫の事務所 かまネコ 「ニャー。 |
●イーハトーヴォ農学校 「きょう一日、こうぎがないんです。 「みんな、じしゅうをしているんです。 「賢治さん? ボクそんな人しらない。 「賢治さんはいぜん、 この学校で先生をしていたんですよ。 |
●らすちじん協会 ファゼーロ 「こんにちは。 私はファゼーロです。 賢治先生にいろいろと しどうをうけている者です。 とおいところおこしいただいて もうしわけないのですが、 先生はでかけております。 「賢治先生はとてもすばらしい人だ。 「貝の火の森へいく道は、 ファゼーロがしってるだ。 「くわしいことはしらねえだが、 賢治先生がたいせつにしていた、 7さつの手帳がなくなったって話だ。 あんた、たびの人だろう? オレのかわりに先生の手帳を、 さがしてきてくれねえだか。 →はい 「そうか。それじゃあさっそく、 貝の火の森にすむほらぐま先生の ところにいってくれ。 ほらぐま先生はなんでもしってるって ひょうばんだ。 賢治先生の手帳のことも、 なにかしってるかもしれんだ。 手帳をみつけたら、 またここにきてくれな。 「賢治先生の手帳は、 みつかっただか? →いいえ 「そうか、そりゃざんねんだ。 この街のみんなにしたわれている 宮沢賢治という人物に きょうみをもった私は、 イーハトーヴォをたびしながら、 7さつの手帳をさがすことにした。 ファゼーロ 「貝の火の森なら、 街をでてずっと東です。 私は、さっそく貝の火の森へ むかうことにした。 |
●貝の火の森 「グフッ、グフッ。 「・・・・・ 「・・・・・ 「・・・・・ 「・・・・・ 「・・・・・ すずらんのはながさいている。 とりますか? →はい <すずらんを手にいれた> →いいえ <かびんにすずらんを生けてみた> すずらんがなりひびく・・・ ほらぐま先生があらわれた。 ほらぐま先生 「なんだ?おまえは。 ほらぐま先生 「わしになにかようかな? 賢治さんの7さつの手帳? さあ・・・ 人の手帳のことなど私はしらぬよ。 そのようなことなら、 ウサギやリスたちのほうが くわしくしっておるはずだ。 なに?動物と話ができない? ううむ、いまどきの人間は 動物と話ができないのか・・・ それはしかたないのう。 あきらめなさい。 ほらぐま先生 「まだあきらめきれぬのか。 ふむ、それではみやげをもって でなおしてこい。 ひとにおしえをこうときは、 手ぶらじゃあいてにされぬものだ。 ほらぐま先生 「みやげはなんだ? なに、わすれた? じゃあなにもおしえない。 |
●イーハトーヴォ市役所 レオーノキュースト 「貝の火の森にすむ、 ほらぐま先生のコトがしりたい? 少々おまちください・・・ ・・・わかりました。 ほらぐま先生のしゅみは、 詩をよむことです。 |
●らすちじん協会 ファゼーロ 「ほらぐま先生のことなら 街の南にすむ詩人がよくしっています。 「貝の火の森へは、 ちゃんといけただか? |
●イーハトーヴォ市街地 「ほらぐま先生にあうのかい? こうみえても、私は詩人だ。 宮沢賢治さんをめざして、 まいにち詩をかいている。 それじゃ、この詩集を わたしてくれないか? そういうと、詩人は私に いっさつの本を手わたした。 <詩集を手にいれた> 「詩集はわたしてくれたかい? |
●貝の火の森 ほらぐま先生 「みやげはもってきたか? <詩集を手わたした> ほらぐま先生 「ほう・・・詩か。 うむ、きにいった。 おまえ、貝の火という珠をしってるか? 貝の火をもてば、 おまえも動物と話せるはずだ。 森のまんなかにあるほこらにいき、 貝の火をとってくるがよい。 そら、これをもってゆけ。 そういうとほらぐま先生は、 私にちいさなカギを手わたした。 <ほこらのカギを手にいれた> ほらぐま先生 「貝の火のちからは、 わしがふういんしてある。 貝の火を手にいれたら、 まずここへくるように。 ほらぐま先生 「わしは、貝の火のばんにんなのだ。 いままで貝の火は、 いつも動物たちの手もとにあった。 貝の火をもつ者は 動物の大将といわれ、 ほかの動物に そんけいされたものだった。 しかしここしばらく、 貝の火にふさわしい者があらわれぬ。 しばらく貝の火はおまえにあずけよう。 ほらぐま先生 「貝の火をとってきたか? <ほこらのかぎをつかった> ほこらのいりぐちがひらいた。 キツネ 「コーン・・・ たからばこのなかに、 あかい火をたたえた 美しいすいしょうの珠がある。 とりますか? →はい <貝の火を手にいれた> →いいえ ほらぐま先生 「貝の火をとってきたようだな。 それではまず、 貝の火にほどこした ふういんをとこう。 <貝の火のふういんをといた> ほらぐま先生 「さあ、これでおまえも 動物たちと話ができるぞ。 よし、貝の火をおまえに あずけにあたって、 ホモイの話をしておこう。 ほらぐま先生 「むかし、 ホモイというウサギがおった。 ホモイはやさしくて、 ゆうきあるウサギだった。 ある日のこと、 ホモイは河でおぼれているヒバリの子の いのちをたすけた。 ヒバリの王はそのことをききおよび、 ホモイこそ貝の火をもつ者だとおもい、 ホモイに貝の火をゆずった。 じっさい貝の火という珠が、 心ただしき者のみもつことがゆるされる 大将のしるしだとしったとき、 ホモイはどうしてじぶんのところに 貝の火がきたのかふしぎにおもった。 こうしてホモイは、 ある日とつぜん動物の大将という地位を 手にいれたのだった。 そしてしばらくたつころには、 ホモイもいつしかそんなことにもなれ、 その地位をここちよくかんじるように なっていた。 そんなとき森にすむキツネが、 動物の大将をたぶらかして なにかおこぼれにあずかろうと、 こぶんのふりをしながら ホモイにとりいってきた。 すべてはけいかくてきだった。 キツネはホモイをおだて、 ホモイがすっかりちょうしづくと しょうたいをあらわし、 つぎからつぎへと わるいことをやりだした。 いつのまにかホモイはキツネの いいなりになっていた。 キツネがトリたちをとらえたときも、 ホモイはキツネがこわくて なにもいえなかった。 キツネのガラスばこのなかでは、 ホモイに貝の火をゆずった ヒバリたちが、 ホモイにたすけを もとめているというのに・・・ そしてこのとき ホモイのゆうきはうしなわれ、 貝の火にはちいさなくもりが できてしまった。 ホモイの父は、 貝の火のくもりをみて なにかがおきたことをしった。 ホモイの父は話をきき、 ホモイをしかった。 そして2人して いのちがけでキツネをおいはらい、 トリたちをにがした。 家にかえると、 貝の火はすっかり かがやきをなくしていた。 すべてはおそかったのだ。 ホモイはないた。 するとそのときとつぜんに、 貝の火がはじけた! 貝の火のかけらは しほうにとびちり、 ホモイの目のなかにとびこんで その目をしろくにごらせた。 それいらい、ホモイの目は みえなくなってしまった。 しばらくして、 わしは森のなかで ぐうぜん貝の火をみつけた。 くだけたはずの珠は、 いまやもとどおりまるく、 美しくかがやいておった。 わしはホモイのあやまちを ほかの者がくりかえさぬように、 貝の火を森のほこらにおき、 ホモイをそそのかしたキツネに みはりをめいじたのだ。 ほらぐま先生 「ホモイの話はこれでおわりだ。 そとにでて、 動物たちと話しをしてくるがよい。 「このたびは、 貝の火があなたのところにきたそうで、 おめでとうございます。 貝の火のちからは、 ただしくつかってくださいね。 「賢治さんの手帳? さあ、ボクはしらないね。 「こんにちは。 やっとあなたも、 ぼくらと話せるようになったね。 「ホモイのせきひに 貝の火をかざすと、 なにかがおきますよ。 「賢治さんの手帳? さあ、わたしはしりません。 「賢治さんの手帳がなくなった? そんな話はきいてませんねえ。 キツネ 「ずっとむかしに、 ホモイというウサギをだましたんだが、 そのあとでほらぐま先生に つかまっちまってね。 それからいままで、 長いこと貝の火をみはってたんだ。 おまえがここにきたってことは、 もうおゆるしがでたってことだろう。 これからは、もうわるいことはやめて まじめに生きるつもりさ。 キツネ 「貝の火はたいせつにしなよ。 |
●イーハトーヴォ市街地 「私はのらいぬ、 ワン、ワン、ワン。 |
●猫の事務所 かまネコ 「はじめまして。 わたしのニャまえは、かまネコです。 からだのいろが黒いのは、 うまれつきではありませんニャ。 でも、かまねこニャかまの めいよのためにも、 がんばらニャくっちゃ。 |
●貝の火の森 <貝の火をかざしてみた> そこにあらわれたのは、 かつて動物の大将だった者、 ホモイだった。 「私はホモイです。 あなたがあたらしい 貝の火のもちぬしですね。 私はこのようなすがたに なってしまいましたが、 そうなったのはすべて 私におごりがあったからです。 つけあがった心が このようなけっかを まねいてしまったのです。 おごった心のワナに、 あなたもきをつけてください。 それから、賢治さんの手帳は、 イーハトーヴォのあちこちに ちらばっています。 あなたが心ただしき者であれば、 しぜんと手帳はあなたのもとに 集まってくるでしょう。 そういうと、ホモイはきえた。 貝の火を手にいれた私は、 とりあえずイーハトーヴォ市街地へ もどることにした。 |