イーハトーヴォ物語
イーハトーヴォ 第一章 貝の火 第二章 カイロ団長 第三章 虔十公園林 第四章 土神と狐 第五章 グスコーブドリの伝記 第六章 オツベルと象 第七章 セロ弾きのゴーシュ 第八章 雪渡り 最終章 銀河鉄道の夜
第一章 貝の火
第二章 カイロ団長
第三章 虔十公園林
第四章 土神と狐
第五章 グスコーブドリの伝記
第六章 オツベルと象
第七章 セロ弾きのゴーシュ
第八章 雪渡り
最終章 銀河鉄道の夜
登場人物 7冊の手帳 アイテム 情報

【最終章 銀河鉄道の夜】
●イーハトーヴォ市街地

男
「ほんとに、さむいきせつになったね。

女
「イーハトーヴォの冬は・・・
ぶるぶるぶる、さむいですね。

●イーハトーヴォ駅前

私
シグナルとシグナレスが話をしている。

シグナル
シグナル
「・・・・・

シグナル
シグナレス
「・・・・・

シグナル
シグナル
「また、あなたは
だまってしまいましたね。

シグナル
シグナレス
「・・・・・

シグナル
シグナル
「やっぱりぼくがキライなんでしょう。
もういいや、どうせぼくなんか・・・

シグナル
シグナレス
「あら、ちがいますわ。

シグナル
シグナル
「それなら?・・・

シグナル
シグナレス
「あたし、もうずっとまえから
あなたのことばかり
かんがえていましたわ。

シグナル
シグナル
「ほんとうですか、ほんとうですか。

シグナル
シグナレス
「ええ。

シグナル
シグナル
「それなら、
ケッコンのやくそくをしてください。

シグナル
シグナレス
「でも。

シグナル
シグナル
「でもなんですか、
ぼくたちは春になったら
ツバメにたのんで、
みんなにもしらせて、
ケッコンのしきをあげましょう。
どうかやくそくしてください。

シグナル
シグナレス
「だってわたしはこんなに
つまらないんですわ。

シグナル
シグナル
「わかってますよ。
ぼくにはそのつまらないところが
とうといんです。

シグナル
シグナレス
「でもあなたは
鉄でできているでしょう。
シンシキでしょう。
あかあおメガネも、
ふたくみまでもってらっしゃるわ。
よるもでんとうでしょう、
わたしはよるはランプですわ、
メガネもただひとつっきり、
それに木ですわ。

シグナル
シグナル
「わかってますよ。
だからぼくはすきなんです。

シグナル
シグナレス
「あらほんとう、うれしいわ。
あたしおやくそくするわ。

シグナル
シグナル
「え、ありがとう、うれしいなあ!
ぼくもおやくそくしますよ。
あなたはきっと、
ぼくのみらいのツマだ。

シグナル
シグナレス
「ええ、そうよ、
あたしけっしてかわらないわ。

シグナル
シグナル
「エンゲージリングをあげますよ。
ほら、あそこの4つならんだ
あおい星・・・
あのいちばんしたのあしもとに、
ちいさなワッカがみえるでしょう。
あのひかりのワね、
あれをうけとってください。
ぼくのまごころです。

シグナル
シグナレス
「ええ、ありがとう。
いただきますわ。

シグナル
シグナル
「ああ、なんてぼくは
しあわせなんだろう。

シグナル
シグナレス
「こんなわたしに、
けっこんをもうしこんで
くださるなんて・・・
わたし、しあわせだわ。

●イーハトーヴォ市街地

男
「こうやって冬をこせるのも、
農家の人たちが春から秋まで
いっしょうけんめい
はたらいたからなんだよ。

男
「いやー、こんなにさむいのに、
そとにいるとこおってしまうよ。
へやのなかは、てんごくだね。

男
「やあ、冬だね。さむい、さむい。
・・・かまネコかい?かまネコなら、
とつぜんいなくなったよ。
イナカにでも、
かえったんじゃないのかな。
「かまネコも、
かわいそうなヤツだったな。

詩人
「おいてはすぎし日をおはず
たけなすつえとかはごろも
ゆきのきざんのやますそに
みあぐるそらはいやしろし・・・
ああ・・・ゆきがふる・・・

少女
「わたしのおとうさん、
イーハトーヴォで
いちばんの詩人なのよ。

女
「冬の間はうちの子も、
家のなかですごすんですよ。
え?私が子もちだとは
しらなかった?
やっぱりわたし、ドクシンで
つうようするかしら?
・・・いやねー、なにいわせるの!

少年
「ボク、いつも1人で
あそんでたんだよ。
でね、冬はさむいからね、
家のなかであそぶよ。

女
「ねこのじむしょも、
ゴタゴタがもとでカイサンして・・・
かまネコって、かわいそう。
いまはなにをしてるんでしょうね?

男
「ねこのじむしょが
どこぞのエライ人に、
カイサンさせられたんだって?
べんりなところだったのにねえ。

女
「農学校が冬休みになったので、
むすこはしゅじんとモリーオへ
りょこうにいきました。
わたしですか?
・・・るすばんです。

男
「ことしの冬は、
きょねんよりさむいね。
そうおもわないか?
→はい
「きみもボクみたく
さむがりなんだね。
→いいえ
「えっ、そんな?・・・
わかった!
きみ、モモヒキをはいて、
らくだシャツをきているだろう!

女
「春がまちどおしいです・・・

女
「はやく春にならないかしら。

男
「冬はあたたかいへやのなかで
ふかしたマンジュウでも
たべるにかぎるよ。

男
「冬はこうして、
ヘヤのなかにいるのがいちばんさ。
ボクのだいすきなえいがも、
しばらくおやすみだしね。

少女
「はーるよこい、はーやくこい。

●ケンジントンホテル

ホテル支配人
ホテルしはいにん
「冬はさむいものと
あきらめてはいるけれど・・・
おきゃくさんがへるのは、
こまりものでございます。

ホテル支配人
ホテルしはいにん
「冬きたりなば春とおからじ・・・
ともいいますし、
春までのシンボウでございます。

女
「イーハトーヴォの冬は、
とてもきびしいですね。
わたしもそろそろ、
ここをひきはらおうかと
おもっているんですよ。
あなたはまだ、
ここにいらっしゃるんでしょう?
→はい
「いろいろおせわになりました。
さようなら。
→いいえ
「あら、そうなんですか。
よそへいっても、
げんきでおすごしください。

●イーハトーヴォ市役所

レオーノキュースト
レオーノキュースト
「ねこのじむしょですか?
ねこのじむしょは
ネコどうしイガミあって、
カイサンしてしまったようです。

●らすちじん協会

ファゼーロ
ファゼーロ
「やあ、いらっしゃいましたね。
賢治先生からあなたに、
手紙がとどいています。

私
私は手紙をみせてもらうことにした。
手紙にはこうかいてあった。

手帳は7さつそろいましたか?
もしおそろいでしたら、
いかのばしょへおこしください。
少々わかりにくいですが、
ちずにしめされたてんまで
きていただければ、
きっとおわかりになるとおもいます。
ちずをどうふういたします。
<ちずをてにいれた>

私
やっと賢治さんに会える。
そして、7さつそろった
手帳をわたせる・・・
ちずをみた私は、
さっそくそのばしょに
いってみることにした。

ファゼーロ
ファゼーロ
「先生はきっと、
あなたにだいじな話があるのです。
はやく先生のところへ、
いってあげてください。

作男
「なに?7さつめの手帳がみつかった?
とうとうぜんぶそろっただな!
・・・けれど賢治先生は、
いったいどこにいるだかなあ?
さっそく手帳をみせて、
先生をよろこばせたいだよ。
「・・・え?賢治先生の
いばしょがわかった?
ど、どこだ?

私
<ちずをみせた>

作男
「ん?・・・・・
こんなところにゃ、
街も村もないはずだがなあ?
とくかく、先生に手帳をみせにいくだ。
あとはたのんだぞ。

作男
「賢治先生は、
どこでなにしてるだかなあ?
「え?賢治先生に会いにいくだか?
先生に会ったら、
みんなクビをながくして
先生がかえってくるのを
まってるってつたえてくれよ。


●後生車の地

私
イシでできたふしぎなオブジエに、
なにかかいてある。
よみますか?
→はい
「これは<ごしょうぐるま>です。
イシのしゃりんを
まわしながらいのれば、
アナタのねがいがかないます。」
とかいてある。
しかし、しゃりんは
とりはずされているのか、
どこにもみあたらない。
→いいえ

私
ちずにしめされたばしょへ
いってみたものの、
賢治さんには会えなかった。


●イーハトーヴォ市役所

レオーノキュースト
レオーノキュースト
「<ごしょうぐるま>のしゃりん?
さあ?私はきいたこともありませんね。

●らすちじん協会

ファゼーロ
ファゼーロ
「ちずのばしょには、
街も村もなかった?
・・・ヘンですねえ。

作男
「ちずのばしょにいったが、
なんにもなかった?
うーん、やっぱりそうだったか。
「しゃりん?
さあ、オレにはわかんねえな。

作男
「そうか、賢治先生には
会えなかっただか・・・

●イーハトーヴォ農学校

クーボー博士
クーボー博士
「やあ、きみか。
あれから銀河鉄道のことを、
さらにイロイロしらべてみたよ。
たいへんなさぎょうだったが、
おもったいじょうの
はっけんがあったので、
いっこくもはやく
キミに話したかったんだ。

クーボー博士
クーボー博士
「まず・・・さいしょにキミに
しらせようとおもったのは、
銀河鉄道がカタミチつうこうの、
ふかんぜんなのりものである、
ということだ。
なぜなら銀河鉄道にのった人間が、
たびをおえてかえってきたキロクは、
まったくといっていいほどないのだ。
銀河鉄道にのってたびをする・・・
それがどういういみか、
キミにはわかるね?
そう、にどとかえってこれない、
ということだ。

クーボー博士
クーボー博士
「そして銀河鉄道のきしゃには、
この<げんしょうだいさんじ>から
のりこむことはできないと
いわれている。
あるふるいブンケンによるとこうだ。
−<げんそうだいよんじ>に、
銀河をかけるのりものあり。
これにのるものは、
すでにそこになきもの、
すなわち、<げんそうだいよんじ>に
ぞくするものなり。−
ココでいうところの
<げんそうだいよんじ>とは、
このセカイすなわち
<げんしょうだいさんじ>とは
まったくちがうせいしつをもつ
セカイのことだそうだ。

クーボー博士
クーボー博士
「さらに、イーハトーヴォの
ふるいキロクにはこうかいてある。
−<げんそうだいよんじ>に
いたるためにおこなうことは、
ただひとつなり。
かくしょにおかれたる
<ごしょうぐるま>の
しゃりんをまわすべし。−
この本をよむかぎりでは、
きみはまず<ごしょうぐるま>という
モノをさがさねばならないようだな。

私
<ごしょうぐるま>は、
いせかいへのつうろだった!
<ごしょうぐるまのなぞがとけた!>

クーボー博士
クーボー博士
「・・・・・なに?
<ごしょうぐるま>はみつけたが、
しゃりんがついていなかった?

クーボー博士
クーボー博士
「そうか。それはこまったな。
どうすればいいのだろう?
ここはひとつ、ファゼーロにでも
そうだんしてみるべきだろうな。
かれはきようだから、
しゃりんのつくりかたくらい、
しっているかもしれんぞ。

●らすちじん協会

ファゼーロ
ファゼーロ
「<ごしょうぐるま>のしゃりんを
つくれとおっしゃるのですか?
だれがそんなことを?
クーボー博士ですか!
うーん・・・・・
ちょうこくはニガテなんです。
私にはつくれません、ごめんなさい。

ファゼーロ
ファゼーロ
「<ごしょうぐるま>のことは、
民話にくわしい人が
なにかしっているかもしれません。
民話にくわしい人?
さあ、私はしりませんが・・・

作男
「しゃりん?
さあ、オレにはわかんねえな。

●イーハトーヴォ市役所

レオーノキュースト
レオーノキュースト
「民話にくわしい人?
街の南にすんでいる詩人を
たずねるとよいでしょう。
なにしろカレは、
たくさんの本をもっていますからね。

●イーハトーヴォ市街地

詩人
「<ごしょうぐるま>について、
おしえてほしい?
ああ、いいよ。
<ごしょうぐるま>はね、
民間しんこうのひとつなんだ。
ムカシはあれをつかってね、
ごせんぞさまなんかと
話をしたりしていたそうだ。
ほかにも、 ちがうせかいへの道をひらく
どうぐというせつがある。
<ごしょうぐるま>の
うえのほうについている、
しゃりんをまわしてつかうんだが・・
ちょうどいい、
ここにしゃりんがあるんだ。
なに、イーハトーヴォの北にある
<ごしょうぐるま>から
しっけいしてきたヤツなんだがね。

私
そういうと詩人は
しゃりんをとりだした。
ナントしゃりんをもっていたのは、
詩人だった!
私はじじょうを話した。

詩人
「そうか、賢治さんに会って
手帳をわたすには、
このしゃりんがひつようなんだね。
それじゃあ、しかたないな。
さあ、もっていきたまえ。

私
そういうと詩人は、
私にしゃりんを手わたした。
<しゃりんを手にいれた>

詩人
「賢治さんによろしく。

少女
「賢治さんによろしくね。

●イーハトーヴォ農学校

クーボー博士
クーボー博士
「そうか、しゃりんがみつかったか。
よかったな。

クーボー博士
クーボー博士
「もしこの街にかえってこれたら、
そのときは私のところへきて、
いろいろ話をきかせてくれたまえ。

●イーハトーヴォ市役所

レオーノキュースト
レオーノキュースト
「<ごしょうぐるま>のしゃりんが
みつかった?
それはおめでとうございます。

●らすちじん協会

ファゼーロ
ファゼーロ
「<ごしょうぐるま>のしゃりんが
みつかった?
よかったですね。

作男
「そうか、またいくだか。
賢治先生によろしくな。

作男
「またいくだか。
こんどこそ先生に
よろしくいっといてくれ。


●後生車の地

私
しゃりんを
<ごしょうぐるま>にとりつけた。
私はしゃりんをまわしながら、
<げんそうだいよんじ>への
道がひらけるようにねんじた。


●銀河の街

私
きがつくと、私はみしらぬ街にいた。

●銀河ステーションホテル

ホテル支配人
ホテルしはいにん
「いらっしゃいませ。
ここは銀河ステーションホテルです。

ゴーシュ
ゴーシュ
「やあ、キミか。
ひさしぶりだね、げんきかい?

ゴーシュ
ゴーシュ
「どうやらキミはこの街に、
賢治さんより先に
とうちゃくしたようだね。
もうじき賢治さんもくるだろうから、
しばらくしてからまたおいでよ。

●銀河の街

学生
「きがつくと、ここにいました。
・・・ふしぎと、おちつく街ですね、
この街は・・・・・

キツネ
キツネ
「こんばんは。
なんとも美しい、よるですねえ。
かもがやのしたにかくしておいた
手帳はうけとっていただけましたか?
→はい
キツネ
キツネ
「それはよかった。
私はあなたに、
−あとでわたすものがある−
そういいましたよね。
それがノートじるし手帳だったんです。
しかし手帳をわたすまえに、
あんなことになってしまって・・・
でもよかった、あの手帳は
あなたにあげようと
おもっていたのです。
→いいえ
キツネ
キツネ
「なんと・・・
あそこには、
私のたいせつにしていた
ノートじるし手帳が
かくしてあったのです。
あとであなたにわたすつもりでした。
あんなことがあったばかりに・・・
ざんねんです。

女
「ああ、この街は
なんてくらいのかしら?
それにわたしは、
なぜここにいるのかしら?

男
「この街にはでぐちがないんだ。
あちこちさがしたけれど、
どうしてもみつからないんだ。
いったいここは、どこなんだろう?

グスコーブドリ
グスコーブドリ
「おひさしぶりです。
こんなところでアナタに
会えるなんて・・・
あれからずいぶんと
長いじかんがすぎたような、
そんなきがします。

グスコーブドリ
グスコーブドリ
「これからどうするつもりなのかって?
さて、それが私にも
わからないのです。

グスコーブドリ
グスコーブドリ
「ここには私のような者が
ほかにもいるようですが・・・

オツベル
オツベル
「たくさんの象におそわれて、
きをうしなったんだが・・・
きづくとここにいたんだよ。

オツベル
オツベル
「たいせつにしていた手帳を、
どうやら家にわすれてしまったようだ。
手帳のなまえ?
兄妹像手帳というんだが・・・

オツベル
オツベル
「しかしここはへんな街だよ。
どこにいくこともできないし、
なぜか1日じゅうくらいんだ。

男
「ああ、うすぐらいけど、
なんておちつくところなんだろう。
ふしぎなきぶんだよ・・・

ヘイジ
ヘイジ
「おら、ヘイジだ。
あっ!おまえは・・・・・

ヘイジ
ヘイジ
「・・・・・

ヘイジ
ヘイジ
「え?オレが村をでてからいままで
なにをしてたかって?
ふん、そんなにしりたいか?
あれからオレはなあ、
あっちこっちフラフラしながら
くらしてたんだが、
ある日チフスにかかっちまって、
ずいぶんとくるしんだだ。
もうだめだとおもったら
すうーっとラクになって、
きがつくとここにいただ。
なんでここにいるかって?
さあ、それはオレにもわからねえ。

ヘイジ
ヘイジ
「オレはこの街が、きにいったぞ。

ホモイ
ホモイ
「手帳はすべてみつかりましたか?
・・・そうですか、みつかりましたか。
あとは賢治さんに会うだけですね。

ホモイ
ホモイ
「私はサウザンクロスへいきます。
わたしのやくめは、おわったのです。

虔十
虔十
「あー、オラ、び、びょうきになって、
キブンがわるくて、きがとおくなって、
きがついたら、ここにいただ。

虔十
虔十
「オ、オラのスギは、
どうなっただかなあ?

●銀河ステーションホテル

ゴーシュ
ゴーシュ
「ああ、きた、きた。

ゴーシュ
ゴーシュ
「賢治さんがうえのへやで
キミをまってるよ。

宮沢賢治
賢治さん
「よくいらっしゃいました。
はじめまして、私が宮沢賢治です。

私
目のまえにたっているのは、
7さつの手帳のもちぬし、
宮沢賢治さんだ。
とうとう賢治さんに会えたのだ。

宮沢賢治
賢治さん
「手帳は集まりましたか?
→いいえ
宮沢賢治
賢治さん
「そうですか?
それでは7さつの手帳を
よういしてから、
またおいでください。
→はい
宮沢賢治
賢治さん
「そうですか。
7さつの手帳すべてがここに
集まったというわけですね。
ごくろうさまでした。

私
私は7さつの手帳を、
賢治さんにわたした。

宮沢賢治
賢治さん
「このふしぎなばしょですか?
ここはせかいのどこにもない街です。
そしてあなたのしっているせかいと、
しらないせかいの間にある街です。
ここにいる人たちですか?
ここにいる人たちは、
銀河鉄道にのって、
じぶんのいくべきところへ
むかう人たちです。
そして私も・・・・・
それでは、いきましょう。

●銀河ステーション

駅員
「ここは銀河ステーションです。
まもなく、
銀河鉄道がしゅっぱつします。
「キップをはいけん。

私
賢治さんは7さつの手帳をみせた。

駅員
「おお、これは・・・
どうぞ、なかへ。
そちらのかたも、キップをどうぞ。
「キップをはいけんします。
どうぞ、こちらへ。
「キップをはいけん。

私
しかし、私はキップなど
もってはいなかった。

駅員
「キップがないかたは、
銀河鉄道におのりになれませんよ。

私
私はむいしきに、
ふところのなかをさがしていた。
・・・・・あった!
私はいつのまにか、
ふしぎなかたちのきっぷをもっていた。
<銀河鉄道のキップを手にいれた>

私
私はキップをみせた。

駅員
「むむ・・・
こ、これは・・・

私
えきいんは、
いっしゅんきんちょうしたようだった。

駅員
「どうぞ、おとおりください。

宮沢賢治
「これが銀河鉄道のきしゃです。
これから私はこのきしゃにのり、
ある人に会いにいきます。
そこでさいごに、
あなたにたずねておきたい
ことがあります。
あなたには、会いたくても、
会うことのできない人がいますか?
→はい →いいえ
宮沢賢治
賢治さん
「では、あなたには、
みちなるせかいを
たびしたいというきもちは
おありですか?
→いいえ(見送りエンド)
→はい
宮沢賢治
賢治さん
「そうですか。
もしあなたがよろしければ、
これから銀河鉄道にのって
いっしょにたびをしませんか?
→いいえ(見送りエンド)
→はい
宮沢賢治
賢治さん
「きっとそうおっしゃると
おもっていました。
さあ、いきましょう。

●エンディング(見送り)

宮沢賢治
賢治さん
「そうですか。
それではここでおわかれです。
手帳のことはどうもありがとう、
さようなら。

私
私は、賢治さんをみおくった・・・

私
しゃりょうがしずかにうきあがり、
星々にむかってキテキをならした。
きしゃはおおきくケムリをはきだし、
くらい道をちからづよく
はしっていく。
私はホームにたちつくして、
そらをゆくふしぎなのりものを
みおくっていた。
やがてきしゃは、
キテキの音だけをのこして
みえなくなった。

●銀河鉄道

男
「この先にはきっと、
すばらしいことが
まっているにちがいない。

女
「私たち、やっとどこかにいけるのね。

虔十
虔十
「こ、このきしゃは
どこにいくんだろう?

オツベル
オツベル
「オレのキップには、
サウザンクロスいきと
かいてあるぞ。
サウザンクロスって、
いったいどこなんだ?
なぜおれはそこに、
いかなければならないんだ?
だれかおしえてくれ。

男
「このきしゃは、
とてもふしぎなのりものですね。

キツネ
キツネ
「サウザンクロスにつくまえに、
アルビレオのかんそくじょに
たちよるじかんは
あるんでしょうかね?

キツネ
キツネ
これから私は銀河鉄道にのって、
星々のかなたへとむかうのです。
ぼうえんきょうナシでも、
星をちかくでみれるのです。

男
「ヘイジってやつは、かわり者だね。
あいつはこの街にのこるってさ。

グスコーブドリ
グスコーブドリ
「これから私たちのむかうせかいは、
まったくみちなるものなんですね。

ゴーシュ
ゴーシュ
「ぼくは、ハクチョウ駅でおりて
プリシオンかいがんへいくつもりだ。

少年
「ああしまった。
ぼく、すいとうをわすれてきた。
スケッチ帳もわすれてきた。
けれどかまわない。
さいしょはハクチョウ駅にいくから、
星のハクチョウがみえるよ。
ぼくは星のハクチョウがすきなんだ。

少年
「これからボクたちは、
銀河鉄道でたびをするんだ。
どこまでも、どこまでも、いくんだ。

ホモイ
ホモイ
「賢治さんの<7さつの手帳>と、
いまあなたのもっている
<とくべつなキップ>があれば、
この<げんそうだいよんじ>の、
どこへでもいけますよ。

宮沢賢治
賢治さん
「銀河鉄道のはてに、
なにがあるのか・・・・
いっしょにたびをして、
たしかめてみましょう。

●エンディング(銀河鉄道の夜)

私
私たちをのせた銀河鉄道が、
キテキの音をひびかせながら
よぞらにまいあがる。
私はいきをころして、
ゆっくりとまどのそとをながめた。
うちゅうがすぐちかくまで、
おしよせてくるのがわかった。